知られざるプライベートバンクの世界を公開
こんにちは。モナコのプライベートバンク(PB)にてプライベートバンカーとして、富裕層向けに投資案件調査、資産運用や節税アドバイスを行っているHiroshiといいます。
現在モナコにて7年が経過し、最近はモナコでご縁がありプライベートバンカー以外にも日本人ファミリーオフィス業務も一部行っております。(※ファミリーオフィスとは、一族が所有する資産の保全、節税、運用や承継に関わり、また家業における役割分担や家の憲法と言うべき「家憲」の制定、家業や資産の承継プランの設計と運用、子供孫等の次世代の育成をサポートします。)
モナコ在住の日本人プライベートバンカーが珍しがられることもあり、プライベートバンクって何!?と聞かれることが多くなってきましたので、実務経験を踏まえて説明したいと思います。
プライベートバンクは、富裕層一族の何でも屋か。それとも秘書なのか。
“プライベートバンク”や”プライベートバンカー”のイメージは、どのような印象でしょうか?そもそもプライベートバンクとの名前は聞いたことはありますでしょうか?
プライベートバンカーは、富裕層ビジネスであるため仕事柄、気品のある落ち着いた高給取りの印象があるかも知れないですが、実際の業務は、何でも対応します。要するに何でも屋です。以下の通り色々表現されることがあります。
・お金の番人
・お金の傭兵
・お金のコントローラー(CFO)
・お金の何でも屋 等
実際の所は、カッコつけて良く言うのであれば、”一族のCFO”、実際に経験したことを正直に言えば総務兼秘書(何でも屋)と思います。
プライベートバンカーの業務(実際の内容)
プライベートバンカーは、煩雑なお金のことを一任されるためCFOとの表現も合っていると思いますが、財務だけではなく経営判断の相談相手にもなり、業務内容が幅広いため“専門性を有する総務秘書担当”だと思います。
当方の主な業務内容は、以下の通りとなります。
①資産管理業務(アセットマネジメント)
資産管理(アセットマネジメントという観点から顧客の資産管理方法を検討)を行います。資産把握し、ポートフォリオ作成、預金、不動産、株、その他所得といったお客様の資産の状況を把握します。資産把握の部分では日本のFPに近く、資産額が億クラスと大きいイメージとなります。
一般的に最低預入金額は、1億円~5億円のレンジ多く、先ずプライベートバンクへの預入をしてもらいます。最近付き合いがある欧州系は、最低預入金額は、C系で3億円、U系が5億円からと聞いています。基本的に現金及び流動性のあるものが評価対象となり、土地等は基本評価対象になりません。
預入資産(AUMと言います)の数0.数%~1%程度がプライベートバンクのフィーとなります。
②投資商品調査及び立案
金融商品調査を行い世界中の金融商品を駆使してポートフォリオに有効な資産運用を調査します。
商品提案し、顧客のリスク許容度や投資戦略を勘案し、投資商品のアロケーションを行います。投資商品によっては、調査時点又は運用実行前にデューデリジェンス(DDと呼びます)を行います。
短期間に資産を増やしたい、リスクをできるだけ抑えて長い目で投資をしたい、節税の相談等、顧客のご希望を伺った上でポートフォリオを作成します。
保守的な運用方針を希望する顧客は、MMF、外貨、債券運用(国債、社債)、不動産、一方攻めの運用方針である場合は、リート、株式運用、ヘッジファンドの比率を多くします。(株式の注文も直接PBが受け売買します。ちなみにプライベートバンク口座で売買した場合、数%(片道)徴収するため、手数料のみを考えた場合、日本株の場合、ネット証券で売買した方が安いです。)
投資商品の調査完了後、最終的にアドバイザーとして提案を行います。リスクとリターンが適切であり、問題がなれければ投資実行します。
運用の補足説明:具体的な運用例として、求められる利回りによってレバレッジを掛ける必要があり、年率8%が必須である場合、例えば、社債運用4%に対して、レバレッジ×2倍以上を行い年率8%をポートフォリオとして組みます。債券運用は、格付けの高めの社債による運用が多いですが、急落した場合に備えてマージンコールが掛からないように十分ヘッジや余裕を持たせる運用方法を行います。
最近ではPBに応じて、仮想通貨(ビットコイン)も数%ポートフォリオに入れることも時折聞きますが少数派となります。
③商品組成業務
社内のプライベートバンキング部署と連携してあらゆる金融商品を調査し、最適なものを精査していきますが、投資額が大きく求める商品がない場合は、商品組成します。対応頻度は多くありませんが、オフショアであるため現地の法的な部分(税制面)、各種手続きがあり、比較的重たい業務になります。
経験があるのは、ご家族のみのファンド組成をオフショアで行った経験があります。理由は、コスト(管理手数料、パフォーマンスフィー、購入手数料)の関係で商品を直接組成した方が安くなると判断したためです。
④総務・秘書業務
(1)担当しているご家族の会社役員になった経験が数回あります。その際の役割は、企業の会計上の問題があり会計・財務を精査し、財務上綺麗に立て直す事でした。会計士とも相談しつつ対応を行いました。また会社戦略の立案、新規事業企画も任されたこともあります。
(2)個人的な相談
・通訳、翻訳(英語が出来ない海外居住者の日本人が多数います。)
・お子様の留学先調査(スイス、英国、オーストラリア、シンガポール等のアジア圏)、学校願書手配、学校アテンド、授業参観アテンド。現地の学校及びインターの調査。担当先生との通訳多数。子供同士の喧嘩について、親の言い分の通訳等も仲裁も兼ねて行いました。
・メイド及び専属運転手の採用及び業務管理、メイド、運転手への給与支払等。
・住居の選定、家具の業者手配、ご家族の業者へのクレーム対応。家具は、大理石のダイニングテーブルで500万円~2,000万円程度で、オーダーメイドで3つイタリアに特注で行いました。また椅子は1個100万~300万円を全部で7つ程注文しました。家具の到着後に傷が複数あり、クレーム処理対応も行っております。
・高級品の購入手配。海外のロレックスビンテージ品調査、海外のパテックフィリップ限定品購入、フェラーリ購入、サザビーズ(Sotheby’s)入札、海外エルメスでのアテンド、バーキン購入時の通訳多数。
チームが社内があると言えど基本的にライバルともなるため、原則一人で対応します。
またプライベートバンカーの知識では、対応しきれないケースも多々あり、常に信用出来る会計士、弁護士にて専門チームを組んでいます。
⑤節税相続関係
節税や相続の相談は、多数あり子、孫への承継については税金で取られないようにどのように対応するか知恵と工夫が必要となります。当方が担当している顧客は、節税や相続は既に対応しており、ニーズは少ない状況です。
プライベートバンク・プライベートバンカーの役割
実際のプライベートバンク、プライベートバンカーの現状を具体的にお伝えしましたが、如何でしたでしょうか?華やかなイメージからはギャップがありましたでしょうか。
プライベートバンカーの役割は、富裕層の資産を増やすのみではなく、資産防衛(守り)も必要であり、幅広い業務内容となります。実際に仕事をしていると1人ベンチャー企業(何でも対応)の様な感覚を受けることもあります。責任が重く専門性も必要ですが、何より信用力が重要となります。
次回の記事では、富裕層のサポートをしており、投資商品を毎日調査・研究しているプライベートバンカーは、どのように自身の資産運用や投資を行うのか、生の状況をお伝え出来ればと考えています。
補足説明:読者の皆様には、少し海外に視野を広げることでプロの間では、パフォーマンスの良い魅力的な商品があることを知って頂きたいためプライベートバンクに関する最新の情報配信を行っております。
モナコ在住。個人投資家として、15年の日本株、外国株式(香港、中国、ベトナム、ドバイ)の運用経験を有する。2007年から日系銀行に勤務。経営企画、上場経験を得てモナコに移住。個人投資家向けに対して、日本株運用のアドバイスも行っています。